それは一体誰なのか

彼の名は“賢者”―その呼び名も通称。本名は全く持って不しょ
『捜したぞ、クリストフ』


歌がいきなり終わるシリーズ。(何


つーか、考える間でもなく、クリストフって賢者のことだよな。
賢者に話し相手になって貰ってたクロエが男性名ってのは不自然だし。
実は姓を呼んでいる?
…無さそうだよな。
フランス語での『Mr./Miss/Mrs.』に相当する語も入ってないようだし。

以上、ネタ振りも含めて前フリ。
本題は此所から。




さて。かの賢者の名がクリストフであるのは良いとして。
今回の本題はこいつ。

『嘘をついているのは誰か?』

  • 嘘つきは誰だ!

どうやら、紡がれた『物語』の中に、大きな嘘が混じっていた模様。
…『物語(フィクション)』なんだから全部嘘じゃん、なんて思考停止はナシとして。

屋根裏物語の末尾、そしてAnother Romanの冒頭。
さらには朝と夜の物語の末尾あたりの喧騒の中。
緑川光が問い掛ける、あの言葉。
嘘つきは一人、確実に居るらしい。
じゃあ、それは誰か。

第一容疑者はもちろん…

賢者その人、である。

  • 何故賢者を疑うのか?

真っ先に思い付く嘘の主。
うさんくさい、が代名詞となった、かのじまんぐにより歌われる楽曲、黄昏の賢者。
…もう一つ、天使の彫像もまたじまんぐにより歌われているが、今は置いておく。
別にじまんぐだから嘘、と言う訳じゃないし。

賢者が嘘つき扱いされる理由は簡単だ。

11文字の伝言を、黄昏の賢者が示す通りに並び変える事で、祝いの言葉が呪いの言葉に変わった事。
その呪いにかかった時、辿り着いた場所は行き詰まりだった事。
屋根裏に至って見る破滅。
そこで告げられる問い、嘘を吐いているのは誰かと。

そりゃあ賢者を疑うのも当然と言うものだ。
屋根裏でのじまんぐの台詞も怪しいし。


だが、待って欲しい。
彼が嘘を吐いたのならば、色々とおかしな話になってしまうのだ。

  • 賢者の抱える理論の定規

彼は何やら数多の事を口にする。
代表は11文字の組替えだが。
その直後に面白い事を口にする。
曰く。

『繰返す歴史』は『死』と『喪失』
『楽園』と『奈落』を巡り
『少年』が去った後も
そこにどんな『物語』を灯すだろう

…サンホラの歴代CDの皆様である。
歴史が繰返すのは、Chronicleに1stと2ndがあることを指す。
それ以外は言わずもがなというところだ。

他を見てみよう。
最初に挙げられる数字『零』『壱』『弐』は、単純に人の数だ。
次に挙げられる素数『弐』『参』『伍』はちょっとややこしいが、これは図形の頂点の様なものと言うべきか。
地平線は線……視界の端から端までを渡る線分であり、端点は2か所。
時の王が眠る墓所……王家の墓といえばピラミッドを連想でき、その形状を横から見上げれば3角形。
星屑と言えば、ペンタグラムであり星型であり☆なので5芒星である。
このように、この3つの数字は図形を示すのだ。
無論、他の歌との因果を考えるならば、この結論では到底すまないだろうが、今はこれまでにとどめておく。
少なくとも、嘘ではない……という結論のために。

以上から、ひとまず歌の中から見て嘘は無さそうである。
では、他の歌との繋がりを簡単に見てみよう。

  • 賢者を支える思念の領域

まず、一番に挙げられる繋がりは屋根裏物語(yaneuraroman:正式名不明のため仮称としてroman→物語)だろう。
なにせ、賢者の告げるもう一つの11文字が導いた曲である。
そこでもじまんぐが賢者らしき様子で言葉を紡いでいるのだから、リンクと見て間違いではあるまい。
折り合わさって死んだ13人の少年。
君臨する女王の如き老婆。
行き詰まりを宣言されるこの曲は、しかし単純に他の曲と結び付いている。

その曲は、檻の中の花。

今の所地平線に埋もれていない、殺戮の女優の経過を告げる歌…である。
実質3部構成となっているこの曲の、まさに第3部で告げられる様相は…まさしく、13人の少年を屠って死んだ、老婆の姿そのものである。
さて、彼女の凶行について、その動機を推察し雄弁に語る男が一人。
彼は堂々とこう名乗る……その名は。

クリストフ・ジャン=ジャック・サンローラン。

クリストフであり。
サンローランである。
ローランサンではなく。
おそらく、聖ローラン。
仏語で聖人を意味する接頭語句がサンで良かったかは分からないが。
詰まるところ、彼もローランの一人である。
Romanが綴られる前に現れていたローラン……


そして、彼は『物語』において探される。
今回の冒頭の小ネタの如く。
彼の名は、不詳どころか。
ただ、マドモアゼル・クロエが知らなかっただけで。
地平線の旅人にはとうに知れているものだったのだ。

以上から、他の曲との繋がりが見て取れる……
黄昏の賢者、屋根裏物語、檻の中の花、これらはクリストフ自身により繋がっている。
強固にリンクしている以上、嘘の入り込む余地は無い。

  • ならば、誰が嘘を?

というわけで、賢者が嘘をついているという説はあまり支持できなくなった。
では、誰が嘘を吐いているのか……?

俺としては一人、見当付けている相手がいる。
確証は無いけれど怪しい歌……その歌は。

よりによって、賢者が真意を問うたあの歌……


11文字の伝言である。



今回は、既に誰かが検証した道筋をなぞるに止どまる形になったけど、次は暴論が飛び出すかもよ?
思考の渦は止まらない……